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何とも今日はツいてない。
さっきまで晴れていたのに急に雨が降り始め、びしょぬれになりながら帰っていると車に水を引っ掛けられ、コンビニを見つけて入ってみれば傘が品切れ。おまけに目の前では橋から増水した川へとダイブするべく、飛び込み姿勢をとる女の子を見つける始末。
学校で何か嫌なことでもあったのか、はたまた彼氏とでも別れたのか。
ともかく目の前で死なれては今日の不幸に箔が付いてしまう。これ以上貧乏神を喜ばせてたまるものか。
だが、今にも飛び降りてしまいそうな目の前の馬鹿な小娘を助けるべくどう声を掛けたものか、死ぬなら靴くらいそろえろとか、お前の死体を引き揚げる仕事をする人の気持ちを考えろとか、止めてほしくてこんなところで自殺するポーズしてるんだろうとか、そんなセリフしか思い浮かばない。
そう考えを巡らせながら彼女にあと一歩で手が届く位置まで近づいてしまった。
そこまで近づいてなお黙って橋の手すりから彼女を引きずり下ろすか、素敵なセリフで背中を押してやるか悩んでいると彼女が俺に気が付いた。
なかなかに整った顔立ちと、華奢な体に服がぬれてまとわりついて薄い胸がすけて見えるのはラッキーかもしれない。そんなことを考えていると、彼女はこちらから目線をはずして川の方へと体重を傾けた。
徐々に濁流へと体を傾けていく彼女がスローモーションのように感じられ、体がビクリと反応する。
なんて嫌な光景だ。
目の前で人が川の藻屑となってしまうなんて。
肩の抜けそうなくらいの衝撃を感じながら、おそらくここしばらくでもっとも体中の筋肉を使って彼女の服をがっつりとつかんでいた。
間一髪だ。
「なんで」
彼女が口を開く。
「なんで助けたの」
まあ予想のできる答えだ。ならばこう答えよう。
「と・・・止めてほしくないなら・・・樹海にでも逝け。」
ドモりながらだが何とかキマった。
むっとした顔をした彼女を引っ張ってとりあえず橋から離れる。
とりあえずは助けてやったものの、少女の手を引く冴えない男の構図は明らかに犯罪臭がする。
こっちに不幸が降りかかる前に適当にこの自殺少女を捨てていかないとならない。
「ね」
「なんだよ」
「靴はかせて。」
「あぁ?
あぁ。」
そう言えば裸足のまま連れてきてしまった。
「はぁ・・・分かった、ここから一歩も動くなよ。」
「なんで?」
「とにかくここから動くな。」
折角助けてやったのにもう一回飛び降りられたら迷惑だからに決まっているだろうと内心思いつつ急いで靴をとってきてやる。
「ほら」
「ありがと・・・」
さっきから思っていたがこのガキは敬語の使い方を知らないのか。
「まっすぐ帰れよ。」
靴を履いたのを確認してから早足でその場を離れる。
とにかく一回は助けてやったんだ、さすがにもう死のうとはしないだろう。あとは知るものか。